ただよう / drift

「わからないまま」でいることについて


모르는 채로 / 이해하지 못하는 채로 있는 것에 대하여

「ただよう」とは、ゆらゆらとさまようさま。ある雰囲気やけはいが、静かにその場に満ちていくさま。何となく感じられ、はっきりとは掴めないけれど、確かに存在していること。この不安定さや落ち着きのなさ、そして、特定の形や目的を持たずに漂う感覚。羊の頭を被り、川に浸かりながら自作の文章を朗読する。パフォーマンスはライブ配信形式で行い、観客はその様子を鑑賞する。言葉が消える中で、コミュニケーションの限界や他者との理解の不確実さに向き合おう。

“ただよう – drift” refers to swaying gently, wandering without a clear direction. It is the way an atmosphere or aura quietly fills a space. Something that is faintly perceptible, elusive yet undeniably present. This instability, this unease—an unanchored sense of floating without a defined shape or purpose. Wearing a sheep’s head, immersed in a river, reading aloud one’s own words. The performance unfolds as a live stream, where the audience witnesses the scene. As words dissolve into silence, we confront the limits of communication and the uncertainty of understanding others. 

2025. 03
Gifu, Japan
Video / sound installation, Performance
Techniques and materials: Zoom, iPhone 12, iPhone XR, Macbook Pro 2018
Size: H4000×W4000×D4000mm


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IAMAS  Annual 2025 / JUNG JIEYUN ジョン ジユン
IAMAS 2025 情報科学芸術大学院大学第23期生修士研究発表会/プロジェクト研究発表会 / JUNG JIEYUN
【出展者情報】ジョン ジユン JUNG Jieyun【IAMAS2025】






作品構造




1. 二つの隔絶された空間の同時存在である。

この作品は、物理的に隔てられた「ギャラリー空間」と「川空間」という、性質の異なる二つの場を同時に提示している。
  • ギャラリー空間:観客がいる場所である。ここは人工的で静的な「鑑賞の場」であり、観客は川空間から送られてくる映像と音声を一方的に受信する存在である。
  • 川空間:パフォーマーがいる場所である。ここは自然の音や流れに支配された「流動の場」であり、パフォーマーは羊の頭を被り、自然と一体化するように存在する。

2. コミュニケーションは一方通行、意図的に不完全である。

二つの空間は、リアルタイムのライブ配信(Zoomなど)によって接続されているが、この接続は意図的に非対称に設計されている
  • 一方通行の送信:川空間からギャラリー空間へは映像と音声が送られるが、ギャラリー側から川空間へのフィードバックや返答は一切できない構造である。
  • 観客は「見られている」という意識から解放され、ただ「見守る存在」となる

3. パフォーマーの声は、自然のノイズに呑み込まれ消滅する。

この作品の核心的なサウンドアートの要素は、川空間で行われる「声の消失」のプロセスである。
  • 羊の頭のパフォーマー:アイデンティティを匿名化したパフォーマーは、川に浸かりながら自作の詩を朗読する。
  • 音響的溶解:その朗読の声は、川のせせらぎ、風、鳥の鳴き声といった自然の音響スケープに徐々に呑み込まれていく
  • 伝達の失敗ではない:この「声の消失」は、コミュニケーションの失敗ではなく、人間の明確な意図(声)が、制御不能な自然(川の流れ)に委ねられることの象徴である。その結果、観客に届くのは、意味を成さない断片的な音の塊である。